事例(2) キャラクターの商標・著作権

キャラクター商品にまつわる商標・著作権のトラブル

とある地域のA市とB市には、何百年にも渡って語り継がれてきた男女の恋愛に関する伝説があり、地元の神社では伝説に基づくお祭りが年に一度開催されていました。そこでA市は伝説に登場する甲姫のキャラクターグッズ化を考え、地域内の製造業者を起用することで地域振興を企画したのです。

キャラクター商品にまつわる商標・著作権のトラブル

A市は某デザイナーにイラスト作成を依頼し、デザイナー承認のうえで商標登録出願を行いました。当該出願を受けてA市は地元の製造業者にキャラクターグッズの商品化を呼びかけます。その呼びかけに、B市にあるX社が応え、A市の承諾を得たうえで甲姫のキャラクターのさまざまな製品化を行い、A市・B市をはじめ地域から評判を呼びました。なかでも、X社が持つCAD技術を駆使した、一品製作品である甲姫の人形(イラストの三次元化)は、独自性・美観性の高い製品として好評を博していたのです。

そのような状況において、ある日、甲姫のイラストを作成したデザイナーの代理人を名乗るY氏(デザイナーの叔父)が、X社に対して、書面で「甲姫の人形の展示禁止及び甲姫の人形のキャラクター商品の販売停止(無料化供給)、並びに、甲姫のイラストが描かれたさまざまな商品の製品化及び販売の禁止」を要求してきました。X社はこの要求にどう対応したらいいのかわからず、A市にも知的財産権に関する担当者がいなかったため、当所に相談依頼が入りました。

解決手段

当所弁理士の山本真一は、直ちにX社社長と面談して本件の事実関係を把握したうえで、Y氏のX社に対する要求が理不尽なものであることを明確化するための策に乗り出しました。

A市による甲姫のイラストの商標登録出願の状況を確認

実は、A市が取得した商標権は、
(1)当該相談日のつい最近に設定登録されたばかりのものであり、しかも
(2)その商標権は、X社のような製造業者が製造した商品やその包装に登録商標を付することを保障するための商品商標権ではなく、X社が製品化した商品とはまったく関係のない商品をデパートやスーパーマーケット等の小売業者が店頭において販売する際に使用することを保障するための小売・卸売役務商標権であること

上記2点が、商標調査の結果、判明しました。その結果、X社が今までに製品化した甲姫の製品を法的に保護するための権利ないしは権原はないことが明らかになりました。つまり、X社はこれまで、デザイナーが持つイラストの著作権に対向する権利や権原もなく製品化や販売を行ってきたということになります。

甲姫イラスト著作権の行方

X社に賛同・協力している別会社W社の社長さんにも参加していただき、三者懇談によってより詳細な事実関係を聞き取りました。

その結果、デザイナーの代理人であると称するY氏は、当該デザイナーが甲姫のイラストを完成させた後に、イラストの著作権をA市に無償で譲渡する旨を申し出ており、しかも、その場には当該デザイナーも同席しており、Y氏の意思表示に対して否認をせず黙認していたことがわかりました。その言動は同席していたX社社長及びW社社長等によって録音されていることが判明したのです。

つまり、甲姫のイラストの著作権は、A市が商標登録出願を特許庁へ提出する前に既にA市に渡っていたことになります。加えて、その譲渡後に、X社社長は、A市から書面にて甲姫イラストの3次元化(変形権)による甲姫の人形の製品化の承認を受けていることも判明しました。

Y氏の要求に対しては……

これらの事実から、X社の甲姫イラストの製品化はA市より許諾された著作権の通常利用権により法的に正当化されており、X社の甲姫の人形の製品化もX社が有する2次的著作物を作成する権利(変形権)により正当化されているので、デザイナーの代理人であるY氏の要求は法的に根拠のない理不尽なものであることが証明されました。そこで、弁理士山本真一は、X社に対して、Y氏の要求を断るように提言し、X社が創作的に表現した二次的著作物の著作権は職務著作権としてX社に帰属することを明確にするための取り計らいも指導・助言しました(甲姫イラストの3次元化による甲姫の人形に係る著作権は、X社名義のものとして文化庁著作権課において登録を受ける)。

結果

その後、デザイナーの代理人を名乗るY氏からの要求は一切ないとのこと。甲姫の人形がお祭りにおいてX社名義で展示されたことは新聞報道され、さらにA市内の伝説にまつわる神社にX社名義で奉納されたことも公開されました。又、X社は自ら、乙君(甲姫の相手となるキャラクター)のイラストを作成すると共に、乙君の人形も作成して、お祭りにおいて会社名義で乙君の人形を披露し、その事実が新聞報道されました。

これらの客観的証拠を用いることで、X社は甲姫の人形及び乙君の人形の著作権者であることが立証され、文化庁著作権課においてそれらの人形の公表年月日の登録を受けることにより、甲姫の人形及び乙君の人形に対する著作権の帰属主体がX社であること、及び、X社の上記著作権の権利の終期の起算点が、明確化されました。

結果、X社は、

  1. 甲姫のイラストが描かれた製品を開発・販売すること、
  2. 甲姫のイラストを三次元化した人形をお祭りなどにおいて展示することと共に、人形のキャラクター商品を製品化して販売すること、
  3. 甲姫の相手である乙君の人形のキャラクター商品を製品化して販売すること

を、自己の権利又は権原として行使できる、という法律関係が明らかにされました。

このページの先頭へ